区分所有法改正で何が変わる?改正前との違いや注意点を解説

区分所有法の改正により、マンションの集会決議や管理・修繕に関するルールが見直されました。
特に、老朽化したマンションでは修繕を行う可能性が高く、総会での決議に関わることがあります。マンションを所有している方は、区分所有法の改正によって何が変わるのか確認しておくことが大切です。
2026年施行の区分所有法改正で何が変わる?
区分所有法の改正は、令和7年5月30日に公布され、令和8年4月1日に施行されました。今回の改正では、マンション管理や修繕、建て替えなどを進めやすくするため、大きく変更された箇所があります。
区分所有法とは?
区分所有法とは、マンションのように一棟の建物を複数の人が所有する場合、住戸ごとの権利関係や管理方法を定めた法律です。正式名称は「建物の区分所有等に関する法律」です。
マンションでは、所有者が住む部分を「専有部分」、廊下や階段、エントランス、屋上など専有部分以外の場所を「共用部分」といいます。区分所有法では、こうした専有部分と共用部分の扱い、管理組合の運営、集会の決議、管理規約などについて定めています。
戸建て住宅であれば、所有者が自分の判断で修繕や売却を進められます。一方、マンションは複数の所有者が一つの建物を共有しているため、外壁の修繕や給排水の交換などを一人の判断で進めることはできません。
令和8年に施行された区分所有法の改正では、建物の老朽化や所有者の高齢化、所在不明者の増加などを背景に、管理や維持を円滑に進めることを目的としています。
区分所有法改正による変更点
令和8年4月に施行された区分所有法改正では、マンションの管理や修繕を円滑に進めるための見直しが行われました。特に大きな変更点として、以下の6点が挙げられます。
| 項目 | 改正前 | 改正後 |
|---|---|---|
| 集会の決議 | 集会の決議では、原則として区分所有者全員を母数としてその過半数で判断する | 区分所有権の処分を伴わない事項であれば、原則として集会に出席した者の多数決で決議できる |
| 所在等不明区分所有者 ※必要な調査をしても氏名や所在などが不明な区分所有者 |
所在等不明区分所有者も決議の母数に含まれていた | 裁判所が定めた所在等不明区分所有者であれば、決議の母数から除外が可能 |
| 財産管理制度 ※裁判所が区分所有者以外の管理人を選任して財産を管理する制度 |
マンションに特化した財産管理制度が存在しなかった | 区分所有者が専有部分や共用部分を適切に管理せず、周囲に危険が及ぶ場合は裁判所が管理人を選任できる制度を新設 |
| 専有部分の保存・管理 | 共用部分の工事は決議で進められる一方、専有部分の工事は原則として各区分所有者の同意が必要だった | 共用部分の管理・変更と同時に行う専有部分の保存・改良については、集会の決議で進めることが可能 |
| 共用部分の管理・変更 | 共用部分の変更は、原則として多数決で4分の3以上を満たす必要があった | 改正前の多数決要件を含め、一定の条件においては、決議の多数決割合が3分の2に緩和された |
| そのほかの管理に関する明確化 | 電子データで作成された規約の閲覧、管理者による共用部分に関する請求権行使などが明確化されていなかった | 管理事務や専有部分の工事などの合理化・円滑化のため、条件が明確化された |
集会の決議が出席者の多数決によって行える
今回の改正では、集会の決議における多数決の定義が大きく変わりました。
まず改正前は、集会に出席していない区分所有者も多数決の母数に含めていたため、実際には反対していなくても、欠席者や無関心な所有者が多いと決議が成立しにくいケースがありました。
改正後は、集会に出席していなくても、議決権行使書(出席できない人が事前に賛否を示す書面)や委任状を提出することで、決議に参加したものとして扱われます。
また、改正によって多数決の方法も見直されています。改正前は、全区分所有者を基準に賛否を判断し、賛成が過半数に満たない場合は否決とされていました。改正後は、出席者の賛成が過半数であれば可決される仕組みに変わっています。
一定数の賛成が集まれば可決できるため、決議を進めやすくなっています。
マンションに特化した財産管理制度が創設できる
区分所有法改正により、マンションに特化した財産管理制度が創設されました。財産管理制度とは、専有部分や共用部分が適切に管理されず、周囲に危険や損害を及ぼすおそれがある場合に、裁判所が管理人を選任して管理する制度です。
所有者と連絡が取れない住戸で配管が腐食したまま放置されていたり、室内にごみが蓄積されていたりすると、近隣の住戸に迷惑がかかることが考えられます。また、外壁が剥落するおそれがある、共用部分に危険物や悪臭を放つ物が放置されている場合も、ほかの区分所有者や近隣住民に悪影響を及ぼすでしょう。
改正後は、管理が行き届いていない専有部分に対して、裁判所が選任した管理人が一定の範囲で管理や処分を行えるようになっています。
専有部分の保存・管理に関する明確化
今回の改正では、専有部分の保存や管理に関するルールも明確化されました。マンションでは、専有部分と共用部分が物理的につながっているため、一部の住戸の不具合がほかの住戸に影響することがあります。
たとえば、上階の専有部分にある配管から漏水が発生すると、下階の住戸に被害が出るケースがあります。このような場合、被害を受けている区分所有者が、原因となっているほかの区分所有者の専有部分について、保存行為(現状維持を目的とした修繕など)を請求できることが明確化されました。
また、改正後は、規約で定めていれば、共用部分の管理・変更と同時に行う専有部分の保存・改良を、集会の決議で進められるようになっています。老朽化したマンションでは、配管や設備の更新が建物全体の維持に関わるため、専有部分と共用部分の修繕を同時に対応できることは利点といえるでしょう。
共用部分の管理・変更に関する明確化
共用部分の管理・変更についても、今回の改正で見直しが行われました。共用部分は、外壁や屋上、廊下、階段、エントランス、配管など、区分所有者全員で使用・管理する部分を指します。
改正前は、共用部分を変更する場合、原則として区分所有者と議決権のそれぞれ4分の3以上の賛成が必要でした。改正後も、共用部分の変更にはこの割合が維持されます。
ただし、一定の事情がある場合は、多数決割合が3分の2まで緩和されます。緩和の対象となる事情の代表的なものとしては、次のものがあります。
- 耐震性や耐火性に問題がある
- 外壁の剥落で周囲に危害が生じるおそれがある
- 給排水管の腐食で衛生上の問題がある
さらに、バリアフリー化も対象になります。たとえば、階段しかないマンションにエレベーターを設置するようなケースでは、従来よりも決議を進めやすくなるでしょう。
そのほかの管理に関する明確化
改正により、決議や財産管理制度以外にも、マンション管理を円滑にするためのルールが整理されています。
まず、区分所有者の責任として、建物の管理に協力する義務が明記されました。マンションは複数の所有者が共同で維持する建物のため、管理組合の活動や修繕の合意への協力を求められます。
また、規約の閲覧についても見直しが行われています。電子データで作成された規約を、送受信によって閲覧できる制度が設けられました。個人の区分所有者には直接関係しない内容もいくつかありますが、管理組合の運営や規約改正には影響するため、一度確認しておくと安心です。
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区分所有法が改正に至った背景

区分所有法が改正された背景には、「マンションの老朽化」と「区分所有者の高齢化」という問題が挙げられます。建物の修繕や建て替えには区分所有者の合意が必要ですが、近年は所有者の高齢化や所在不明者の増加により、決議が進みにくくなっています。
国土交通省が令和7年に公表した資料では、築40年以上のマンションは全体の約2割にあたり、その数は10年後に2倍、20年後は3.4倍に増える見込みです。マンションの築年数が古くなるほど、外壁や屋上防水、給排水管、エレベーターなどの修繕が必要になります。
しかし、区分所有者が総会に出席しない、議決権を行使しない、所有者の所在が分からない場合、必要な修繕工事であっても決議が成立しにくくなることが予想されます。共用部分の修繕が放置されれば、設備の劣化や不具合などを通じて、建物全体に影響を及ぼすかもしれません。
こうした課題に対応するため、区分所有法の改正では、決議における多数決の母数や財産管理制度、専有部分と共用部分の工事の扱いが見直されました。今回の区分所有法改正は、個々の所有者だけでなく、管理組合や管理会社、マンションを購入する人にも関係する改正といえるでしょう。
参考:国土交通省「令和7年マンション関係法改正とこれからのマンション管理」
区分所有法改正により注意するポイント
区分所有法改正により、マンションの管理や修繕を進めやすくなる一方で、区分所有者や管理会社が確認すべき事項が増えています。特に区分所有者が注意しておきたいポイントに絞って解説します。
区分所有者(個人)が確認すべきこと
マンションを所有している個人の方は、まず自分のマンションの管理規約が改正法でどう変化したのか確認しましょう。
特に、総会の招集手続きや決議要件は重要です。令和8年4月1日以降に総会を行う場合は、改正後の区分所有法に基づき、決議における過半数の要件を満たす必要があります。区分所有者として、総会資料や議案書の内容を確認し、従来のルールと何が変わるのかを把握しておくことが大切です。
改正後は、原則として出席者のみの多数決で決議できるようになっています。無関心でいると、自分が出席していない総会で修繕や管理に関する重要な決議が進むおそれがあるのです。
総会に出席できない場合でも、議決権行使書や委任状を提出するなど、意思表示を行うことが重要です。管理組合や管理会社からの通知を、確実に受け取れる状態にしておきましょう。
法人や管理会社が確認すべきこと
区分所有法の改正により、マンション管理や建て替えに関する決議は以前より進めやすくなりました。一方で、決議の種類、多数決に必要な賛成割合、招集通知の内容、管理規約との整合性を正しく確認することが重要です。
特に管理会社は、従来と同じ流れで集会や総会を進めると、改正後の要件と合わず、賛否の計算を誤るおそれがあります。決議の賛否を誤ってしまうと、後から集会決議の有効性が争われることも考えられます。
法人の区分所有者も、自社が所有する住戸の議決権や、決議に参加する担当者・代理人の権限を確認しておきましょう。法人の区分所有者や管理会社は、改正後の内容を正しく理解することが大切です。
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