住所・氏名変更登記の義務化とは?対象者・過料・申請の流れを解説

住所・氏名変更登記の義務化により、不動産の所有者は登記簿上の情報に変更があった場合、申請が必要になります。手続きを放置すると5万円以下の過料の対象になるだけでなく、不動産売却や相続手続きがスムーズに進まないおそれもあります。
住所・氏名変更登記の対象者や申請方法を事前に確認し、トラブルを防ぎましょう。
住所・氏名変更登記とは?義務化以前でも対象になる
住所・氏名変更登記とは、不動産所有者の住所や氏名、法人名などに変更があった場合に行う法的な手続きです。法務省の公式サイトでは「住所等変更登記」と記載されています。
不動産の登記簿には不動産自体の情報だけでなく、所有者の住所や氏名も記載されています。これらの事項に変更があったにもかかわらず変更登記をしない場合、記載された情報が古いまま放置されてしまいます。
そのため、令和8年4月1日から、所有者の住所や氏名・名称に変更があった場合に登記が義務化されました。登記簿上の情報が古いまま放置されると、所有者に連絡が取れず、土地の管理や公共事業などに支障が出るためです。
現在のルールでは、住所・氏名などの変更から2年以内に変更登記を行う必要があるため、該当する方は早めに対応しましょう。
参考:法務省「住所等変更登記の義務化に関するQ&A」
対象者は不動産の所有者かつ登記名義人
住所・氏名変更登記の対象者は、基本的に不動産の所有者かつ登記名義人です。
不動産の所有者かつ登記名義人である人物の住所・氏名・名称が変わった場合、変更登記を行う必要があります。対象になるケースと対象外のケースについて、それぞれ具体例を用いてわかりやすく説明します。
| ケース例 | 対象になるか | 備考 |
|---|---|---|
| 不動産の所有者かつ登記名義人本人の住所・氏名・名称が変わった | 対象になる | - |
| 夫名義の不動産に妻として住むことになったが、名義は夫単独のまま | 夫・妻ともに対象にならない | 夫:住所・氏名の変更がないため対象外 妻:登記名義人ではないため住所変更があっても登記は不要 |
| 転居により住民票を移したが、2年以内に登記簿上の住所へ戻った (例:単身赴任で一時的に転居し、赴任終了後に元の住所へ戻った場合など) |
原則として対象となる | 単身赴任などで一時的に住民票を移した場合、登記名義人の住所が変わっているため対象となる可能性がある ※個別性が高いため別途確認が必要 |
| 不動産を相続したが相続登記をまだしておらず、その後転居により住所が変わった | 対象外 | まず相続登記を行い、所有権の登記名義人を相続人にする必要がある |
変更登記をせずに放置した場合のリスク
不動産所有者および登記名義人の住所・氏名の変更があったにもかかわらず変更登記をせずに放置すると、5万円以下の過料の対象になります。
根拠となるのは不動産登記法第164条2項です。同条では以下のように規定されています。
第百六十四条 2
第七十六条の五の規定による申請をすべき義務がある者が正当な理由がないのにその申請を怠ったときは、五万円以下の過料に処する。
不動産登記法第76条の5では、所有権の登記名義人の住所・氏名・名称に変更があった場合には、変更から2年以内に変更登記が必要と定められています。
引用:e-Gov 法令検索|不動産登記法
義務化前に住所・氏名を変更している場合も対象になる
住所・氏名変更登記は、義務化される令和8年4月1日より前に、住所や氏名・名称に変更があった場合も対象です。
義務化の前に住所や氏名の変更をした方は、令和10年3月末までに変更登記を行う必要があります。
住所・氏名変更登記義務化の背景
住所・氏名変更登記の義務化の背景として挙げられているのが、全国に広がる所有者不明の土地の問題です。
近年、不動産の登記簿をみても所有者や連絡先がわからない「所有者不明土地」が急増しています。所有者不明の土地は周辺環境の悪化や公共事業の進行を妨げるなど、さまざまなトラブルの原因となっています。
不動産の所有者と連絡がつかない事態を防ぐために、住所・氏名変更登記は義務化されたのです。
不動産の登記に関する相談
住所・氏名変更登記を申請するときの主な手続き

住所・氏名変更登記の手続きは、対象の不動産の所在地を管轄する法務局で行います。申請する法務局を誤ってしまうと、必要以上の手間やコストが発生するおそれがあるため注意しましょう。
スムーズに変更登記を行うためには、手続きの方法を押さえておくことが大切です。主な申請方法である窓口、郵送、オンラインの3種類について詳しく解説します。
窓口申請
法務局の窓口へ必要書類を持参し、直接申請の手続きを行う方法です。
窓口申請のメリットとして、書類が揃っているかを窓口で確認してもらえる点が挙げられます。書類の不備や漏れがあってもその場で指摘してもらえるため、修正にかかる時間が最小限で済みます。
窓口申請のデメリットは、法務局に直接行く時間と手間がかかる点です。また、法務局の窓口が開いているのは平日の日中のみであるため、時間の都合で難しい人も多いでしょう。
なお窓口の対応時間は法務局によって異なる可能性があるため、詳しくは管轄の法務局の案内をご確認ください。
郵送申請
法務局へ行く時間がない人は、必要書類を郵送して登記申請をする方法もあります。
郵送申請のメリットは、自分の都合のよいタイミングで対応できる点です。平日の日中に時間を確保するのが難しい人には、郵送申請がおすすめです。
郵送申請のデメリットは、郵送料が申請者負担のため、他の申請方法に比べるとどうしてもコストがかかってしまいます。
なお、郵送による登記申請では以下の3点が特に間違えやすいので注意しましょう。
- 普通郵便ではなく、記録が残る一般・簡易書留やレターパックで送付する
- 封筒の表面に「不動産登記申請書在中」と記載する
- 返信用封筒・切手・書留郵便の場合も切手の同封が必要
オンライン申請
オンライン申請は「登記・供託オンライン申請システム」という専用システムで行います。
オンライン申請のメリットは、平日の21時まで利用できる点です。オンラインなので仕事終わりに申請することも可能です。
デメリットとして、申請用総合ソフトのダウンロードなど事前準備が必要な点が挙げられます。環境設定がスムーズに進まず、他の方法よりも手間がかかると感じる方もいるでしょう。
参考:法務省「かんたん登記・供託申請」
スマート変更登記でも申請可能
法務省がおすすめしているのが、比較的簡単にできるスマート変更登記という方法です。
個人の場合は、氏名・住所・生年月日・メールアドレスなどの検索用情報を事前に申し出ます。法人の場合は、会社法人等番号などの情報が必要です。2年に1回程度ですが、法務局から本人確認が行われ、了解を得たうえで変更登記が行われます。
自分で変更登記を申請する負担を減らせるうえ、無料で利用できる点がメリットです。
デメリットとしては、事前に個人情報の提供が必要になることですが、Webブラウザ上で行えるためあまり手間はかからないでしょう。
参考:法務省「スマート変更登記のご利用方法」
住所・氏名変更登記の必要書類および費用
変更登記の申請における必要書類は、住所と氏名のどちらを変更するかによって異なります。
住所変更の場合は、住所が変わった事実を証明する書類として住民票または戸籍の附票が必要です。氏名変更の場合は戸籍謄本を用意します。
窓口または郵送で申請する場合は、自身で登記申請書を用意する必要があります。登記申請書のフォーマットは法務局の公式サイトでダウンロードが可能です。変更登記にかかる費用は不動産1つにつき1,000円で、土地と建物の場合は2つとなるため費用は2,000円となります。
なお、変更登記を含む登記にかかる費用を登録免許税といい、原則として収入印紙を用いて支払います。住所・氏名変更登記をオンラインで行う場合でも、この登録免許税の費用がかかります。
参考:法務省「不動産登記の申請書様式について」
住所・氏名変更登記の義務化で起こりやすいトラブル
正当な理由がなく変更登記を行わなかった場合、過料の対象となります。住所・氏名変更登記をしない場合、起こりやすいトラブルもあるため確認しておきましょう。
申請を怠ると不動産売却がしにくくなる
住所・氏名変更登記を怠ると不動産売却がしにくくなります。住所や氏名の変更登記をしていない場合、不動産の登記事項証明書(登記簿謄本)に記載された所有者の住所・氏名と、実際の住所・氏名に相違があるためです。
所有権移転登記の申請では売主の印鑑証明書を提出しますが、印鑑証明書には売主の現住所や氏名が記載されています。印鑑証明書の情報と登記簿上の情報が異なる場合、所有権移転登記を進められません。
売却時に、住所・氏名変更登記を先に行う、または所有権移転登記とあわせて申請するなどの対応が必要になります。売主都合で手続きを長期間止めてしまうと、買い手からの信用を失い、売却キャンセルになることも考えられます。
相続登記後に住所が変わると再度登記が必要になる
相続によって不動産を取得した人は相続登記が必要ですが、タイミングによっては、住所・氏名変更登記と相続登記を別々に行うことになります。
特に注意が必要なのは、相続登記の直後に引っ越しをする場合です。引っ越しによって住所が変われば、不動産の登記事項証明書に記載された住所と現住所が異なってしまいます。そのため、短期間に登記手続きを2回行うことになり、余計な手間が増えてしまうのです。
引っ越しの予定がある方は、登記のスケジュールを慎重に検討することが重要です。相続登記の期限を念頭に置きながら、司法書士などの専門家に相談すると安心でしょう。
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