任意売却の流れをわかりやすく解説|できないケースや注意点も紹介

任意売却とは、住宅ローンの返済が難しくなったときに、金融機関などの同意を得て不動産を売却する方法です。通常、不動産を売却する際は、売却代金で足りない分を自己資金などで補い、ローンを完済する必要があります。一方、任意売却では住宅ローンを完済できなくても、不動産を売却できる可能性があります。
任意売却を行うには、金融機関との交渉や売却期限の調整などが必要です。この記事では、基本的な流れを8つの段階に分けて詳しく解説するとともに、任意売却ができないケースについても紹介しています。
任意売却で不動産を売却する流れ
任意売却は、金融機関などの同意を得て売却を進める必要があるため、通常の不動産売却とは手続きが異なります。
基本的な任意売却の流れは以下のとおりです。
- 不動産会社へ相談する
- 借入残高や滞納状況を確認する
- 物件の査定を行う
- 債権者(金融機関)に任意売却を申し出る
- 媒介契約を結び、売却活動を開始する
- 買主が見つかったら売買契約を結ぶ
- 決済・抵当権抹消・引き渡しを行う
- 売却後に残った住宅ローンを返済する
売却期間は、物件の状況や金融機関との交渉、買主が見つかるまでの時間によって異なりますが、相談から売却完了までに3〜6カ月程度かかるのが一般的です。任意売却は売却期限が限られることも多いため、ローンの返済が難しくなるおそれがある方は、できるだけ早めに相談しましょう。
1. 不動産会社や専門家へ相談する
まずは、任意売却に対応できる不動産会社へ相談しましょう。任意売却は、一般的な不動産売却と異なり、金融機関との交渉や住宅ローンの返済方法についての調整が必要です。
そのため、任意売却の実績があり、金融機関との交渉に慣れている不動産会社を選ぶことが重要になります。相談時には、住宅ローンの返済状況や売却を検討している理由、今後の生活についても伝えましょう。
住宅ローン以外にも借金がある場合や、債務整理を検討している場合は、弁護士や司法書士など専門家への相談がおすすめです。返済が難しくなる見込みがある方は、早めに相談することで、返済条件の見直しなども含めて対応を検討できます。
2. 借入残高や滞納状況を確認する
続いて、住宅ローンが現在いくら残っているのか、どの程度滞納しているのかを確認します。任意売却が必要かどうかを判断するためにも、現在の借入状況を正確に把握することが大切です。
確認しておきたい項目は、下記のとおりです。
| 確認項目 | 確認する内容 |
|---|---|
| 住宅ローンの残高 | まだ返済が終わっていない借入金の総額 |
| 住宅ローンの滞納状況 | 滞納している金額や期間 |
| 遅延損害金 | 返済が遅れたことで発生している追加の支払い |
| その他の借入金 | 住宅ローン以外の借金や担保の設定状況 |
| 税金などの滞納 | 固定資産税や住民税、社会保険料などの未納状況 |
住宅ローンの残高は、金融機関から送付される返済予定表や残高証明書、インターネットバンキングなどで確認できます。すでに滞納している方は金融機関に問い合わせ、滞納している金額や今後の返済条件を確認しましょう。
また、住宅ローンを一定期間滞納すると、金融機関から残りの借入金を一括返済するよう求められる場合があります。こうした状況も踏まえて、任意売却を進められるか判断します。
3. 物件の査定を行う
借入状況を確認したら、不動産会社に物件の査定を依頼します。査定では、物件の立地や築年数、建物の状態、周辺の取引事例などを参考に、売却できると見込まれる価格を算出します。
任意売却の場合は、査定価格と住宅ローンの残高を比較し、売却後にどの程度の借金が残るのかを確認することが大切です。
たとえば、住宅ローンの残高が3,000万円、査定価格が2,500万円だった場合、そのままの価格で売却できても500万円の借金が残る計算です。実際は、売却にかかる諸費用なども売却代金から差し引かれるため、返済に充てられる金額はさらに少なくなり、残る借金も増えます。
査定価格は不動産会社が予想する売却価格であり、必ずその金額で売れるわけではありません。
4. 債権者(金融機関)に任意売却を申し出る
通常、住宅ローンで購入した不動産には、金融機関の「抵当権」が設定されています。抵当権とは、ローンの返済が滞った場合に、金融機関が不動産を競売にかけ、その売却代金から優先的に貸付金を回収できる権利のことです。
不動産を買主に引き渡す際、原則としてこの抵当権を抹消する必要があります。住宅ローンを完済できれば抵当権の抹消は可能ですが、売却代金だけでは完済できないことも考えられます。
そのため、金融機関に対して査定価格や返済計画を提示し、任意売却を進められるか協議します。複数の金融機関などが抵当権を設定している場合は、関係するすべての債権者との調整が必要です。
5. 媒介契約を結び、売却活動を開始する
金融機関と売却条件を調整後、不動産会社と媒介契約を締結し、売却活動を開始します。媒介契約とは、物件の売却を不動産会社に依頼するための契約です。
媒介契約の締結後は、一般的な不動産売却と同じように、不動産情報サイトへの掲載や購入希望者への物件紹介、内覧対応などを行います。注意したいのが、任意売却では売却期限や売却価格について、金融機関と相談しながら進めなければいけないという点です。
つまり、買主がなかなか見つからない場合でも、売主の判断だけで自由に値下げできないということです。価格を変更する際は、金融機関への確認や承諾が必要になります。
また、すでに競売の手続きが進んでいる場合は、買主を見つけるための時間が限られます。購入希望者が現れないときは、不動産会社と販売状況を確認し、金融機関とも相談しながら販売条件を見直しましょう。
6. 買主が見つかったら売買契約を結ぶ
購入希望者が見つかったら、売買価格や引き渡し時期などの条件を調整します。通常の不動産売却では、売主と買主が条件に合意すれば売買契約へ進めますが、任意売却では金融機関の最終的な承諾を得る必要があります。
金融機関は、購入希望者が提示した価格などをもとに、抵当権の抹消に応じられるか審査します。
金融機関が抵当権の抹消に応じられない場合、売買契約を結んでも不動産を引き渡せないおそれがあります。そのため、売買契約を締結する際は、金融機関の承諾を得られなかった場合に契約を解除できるよう、契約書に条件を設けることが重要です。
7. 決済・抵当権抹消・引き渡しを行う
売買契約の締結後、決められた日に売却代金の決済と物件の引き渡しを行います。
任意売却では、受け取った売却代金を、事前に金融機関と合意した条件に従って返済に充てます。また、金融機関から抵当権抹消に必要な書類を受け取り、司法書士が登記手続きを進めるのが一般的です。
競売が申し立てられている場合は、事前に債権者と調整したうえで、競売申立ての取下げに必要な手続きを進めておきます。税金の滞納などによる差押えがある場合は、その解除も必要です。
これらの手続きとあわせて買主への所有権移転登記を行い、物件の鍵などを引き渡せば売却は完了します。
8. 売却後に残った住宅ローンを返済する
任意売却で不動産を売却しても、ローンを完済できるとは限りません。売却代金で完済できなかった借金は、原則として物件の売却後も返済を続けることになります。
たとえば、住宅ローンの残高が3,000万円で、売却代金から返済に充てられる金額が2,300万円だった場合、単純計算で700万円の借金が残ります。残った借金については、金融機関や債権回収会社と相談し、収入や生活状況を踏まえて返済方法を決めていきます。
一括返済が難しい場合は、分割返済について相談できるケースもあります。ただし、必ず希望どおりの返済条件が認められるわけではありません。また、任意売却を行っただけで借金が免除されるわけではないため、返済が難しい場合は弁護士などに債務整理について相談することも検討しましょう。
任意売却ができないケース

任意売却は、住宅ローンの返済が難しくなった場合に利用できる売却方法ですが、希望すれば必ず利用できるわけではありません。金融機関の同意を得られない場合や、税金などの滞納による差押えを解除できない場合、競売の手続きが進んでいる場合などは、利用できないことがあります。
ここでは、任意売却が難しくなる代表的な3つのケースについて解説します。
債権者の同意を得られないケース
任意売却では、金融機関などの債権者から同意を得る必要があります。
しかし、売却価格が低すぎる場合や、金融機関が競売のほうが貸付金を多く回収できると判断した場合などは、同意を得られないことがあります。たとえば、査定価格が2,500万円の物件を1,000万円で売り出そうとした場合、金融機関は競売のほうが多く回収できると判断し、任意売却を認めない可能性があります。
また、債権者が複数ある場合は、それぞれの同意が必要です。一部の債権者が抵当権の抹消に応じなければ、任意売却を進められません。金融機関によって任意売却の判断基準は異なるため、不動産会社を通じて売却条件を調整することが重要です。
税金などの滞納により差押えを解除できないケース
固定資産税や住民税、社会保険料などを滞納している場合も、任意売却が難しくなることがあります。税金などの滞納が続くと、国や自治体によって不動産が差し押さえられるおそれがあるためです。
差押えとは、滞納している税金などを回収するために、財産の処分を制限する手続きです。不動産が差し押さえられている場合、原則として差押えを解除してもらわなければ、買主への引き渡しを進められません。
差押えを解除するには、原則として滞納している税金などを納付する必要があります。ただし、全額を一括納付できない場合でも、滞納先と相談することで解除に応じてもらえる可能性があります。住宅ローン以外にも滞納がある場合は、不動産会社にその事実を伝え、早めに対応を検討しましょう。
競売の手続きが進みすぎているケース
住宅ローンの滞納が続き、金融機関からの一括返済の請求にも応じられない場合、競売の手続きが開始されることがあります。
競売開始決定通知が届いた後でも、任意売却できる可能性はあります。しかし、競売の手続きが進むほど、売却活動に使える期間は短くなります。任意売却を進めるには、原則として競売の開札期日の前日までに、債権者に競売申立てを取り下げてもらえるよう準備を整えることが重要です。
開札とは、競売の入札結果を確認し、最も高い金額で入札した人を決める手続きです。開札後も一定の条件を満たせば競売申立てを取り下げられる場合がありますが、最高額で入札した人などの同意が必要となり、手続きがさらに複雑になります。
任意売却では、買主を見つけるだけでなく、金融機関との交渉や売買契約、決済などにも時間がかかります。住宅ローンの返済が難しくなっている場合は、競売の開始を待たず、早めに不動産会社や金融機関へ相談しましょう。
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