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相続不動産を売却して相続人で分割する方法とは?かかる税金や注意点について解説

2024/06/28

土地や建物などの不動産は分割しにくい財産なので、相続時に売却を前提として分割方法を検討している人も多いでしょう。選ぶ方法によってはトラブルに発展するリスクもあるため、相続人全員が納得できる方法を導き出すことが大切です。

相続した不動産を売却して分割する方法の種類やそれぞれのメリット・デメリット、かかる税金について詳しく解説します。

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相続が発生したら相続人同士で遺産分割協議をする

被相続人(亡くなった人)が遺言書を残していれば、相続人は原則遺言書の内容にのっとって遺産を相続します。しかし遺言書がない場合は、相続人全員が立ち会いのもと「遺産分割協議」を行い、どのように遺産を分けるのか話し合う必要があります。

相続にまつわるトラブルを避けるには、きちんと相続人全員が納得する分割方法を協議し、内容を書面に残すことが大切です。ここでは、どのような遺産の分割方法があるのかを解説します。

遺産を分ける4つの方法

相続した遺産を分割する方法には、以下の4つがあります。

分割方法 方法の概要 適しているケース
現物分割 遺産をそのままの状態で分割する方法

例:親が亡くなった場合、長男が土地、次男が現金、三男が株式を相続する

  • 分割の内容に相続人全員が納得しているケース
  • 相続した遺産の評価額に差があったときに差分を調整できるだけの現金があり、公平に遺産を分割できるケース など

 

換価分割 すべての遺産を売却して、代金を分割する方法

例:車500万円、土地1,500万円をすべて売却して、現金2,000万円を相続人で分ける

  • 遺産をそのままの状態で相続することを誰も望んでいないケース
  • 代償金を用意できないケース など
代償分割 相続人の一人が遺産を相続する代わりに、ほかの相続人へ代償金を支払う方法

例:長男が2,000万円相当の不動産を所有し、次男に1,000万円を支払う

  • 現物分割が難しい遺産(不動産・車など)を相続するケース
  • 遺産を相続する相続人が代償金を支払う資力を有しているケース など
共有分割 遺産を複数の相続人で共有取得する方法

例:不動産を長男・長女・次男の3人が一定の割合で分割し、それぞれが登記を行う

  • 賃貸物件などで得られる収益を公平に分けたいケース
  • 遺産分割協議が難航しているケース など

相続する遺産に不動産が含まれており、売却をする前提で遺産分割協議を行う場合は、「換価分割」もしくは「代償分割」の二つから選ぶことが多いです。

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換価分割のメリット・デメリット

換価分割は、相続人一人に遺産が集中することなく平等に遺産を分割しやすいのが特長です。また、不動産評価の方法によって「実はAさんの相続額のほうが多かった」などと後々にトラブルが起きることもない点も、メリットといえます。また、相続税は基本的に現金で納める必要があるため、不動産を売却して現金化しておけば、納税対策にもなるでしょう。

一方で換価分割をする際に急いで不動産を売却すると、思ったよりも安値になってしまう可能性があります。さらに換価分割では、不動産売却時に相続人全員が売却額に合意する必要があるので、売却のタイミングや価格でもめてトラブルに発展してしまうケースもあるでしょう。

換価分割でかかる税金

換価分割した不動産を売却すると、分配割合に応じた譲渡所得税が課されます。譲渡所得税の税率は、不動産の所有年数によって異なるので注意が必要です。

所有年数 所得税率 住民税率
5年以内(短期譲渡所得) 30% 9%
5年超(長期譲渡所得) 15% 5%

※上記に加えて、2037年まで復興特別所得税を納める必要があります

所有年数は、不動産を売却した年の1月1日時点で5年以内か超えているかどうかで判断してください。

※参考:国税庁「土地や建物を売ったとき

換価分割を選ぶ際の注意点

換価分割による不動産の売却益には、基本的に贈与税が課されません。ただし、以下のようなケースに当てはまると贈与とみなされるおそれもあるので、注意しましょう。

  • 遺産分割協議書に「換価分割を行う」ことや、分配方法をきちんと明記していない
  • 売却から現金の分配を行うまでに、長い期間が空いてしまう

特に遺産分割協議書は、不動産の相続登記を単独登記するのか共同登記するのかでも書き方が異なるので、手続きに不安がある場合は専門家へ相談するのも方法の一つです。
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代償分割のメリット・デメリット

不動産を相続した際に用いられるもう一つの分割方法が、代償分割です。代償分割は、基本的に遺産分割協議の成立後に代償金を支払う必要があるので、資金力を要する点がデメリットといえます。しかし、複数の相続人で手続きを行わなくて済むので、遺産分割をスムーズに進めたい人に適しています。

また、不動産の売却を前提として代償分割を行う場合、代償金の支払い時期を不動産売却後にするケースも存在します。

代償分割でかかる税金

代償分割で相続した財産や受け取る代償金は、相続税の対象です。ただし代償金を支払った人と受け取った人では、課税価格の算出方法が異なります。ここでは、相続税評価額を使って評価した場合と時価を使って評価した場合の計算式を紹介します。

 

対象者 相続税評価額を使って評価した場合 時価を使って評価した場合
代償金を支払った相続人 課税価格=相続税評価額-代償金額 課税価格=相続税評価額-代償金額×(相続税評価額÷代償分割時の時価)
代償金を受け取った相続人 課税価格=相続税評価額+代償金額 課税価格=相続税評価額+代償金額×(相続税評価額÷代償分割時の時価)

代償分割を選ぶ際の注意点

代償分割を選ぶ際には、遺産分割協議書に「遺産分割のために代償金(財産)を支払う」と明記しなければ、代償金の支払いを贈与とみなされて贈与税がかかるおそれがあります。

換価分割を行うことや分配方法を明記すればよい換価分割とは異なり、代償分割では代償金(財産)の種類や金額、支払い期限を明記する必要があり、分割方法にのっとった内容を正しく記載しなければなりません。

また、相続した不動産は評価額の算出方法によって金額が変わります。それに伴って代償金の額も変わるため、代償金を高くしたい相続人と代償金を安く抑えたい相続人の意見がぶつかることで、話し合いが難航するケースがあることを認識しておきましょう。

相続した不動産を売却する際に適用できる控除制度

換価分割の場合も、相続した不動産を売却する前提で代償分割を行う場合も、条件に当てはまれば控除制度を利用して譲渡所得税を節税できます。ただし、不動産売却益の分配方法や控除の適用可否によって、分配割合の調整をしないと不公平が生じてしまう可能性がゼロではありません。相続した不動産の売却を検討しているのであれば、控除制度の内容についてもしっかり把握しておきましょう。

居住用財産の3,000万円の特別控除の特例

相続人が相続する不動産に居住していた場合、要件を満たせば所有期間に関係なく譲渡所得から最高3,000万円まで控除できます。たとえば相続人が、相続不動産に住んでいた長男と別居の長女の2名であった場合、本特例を利用できるのは長男のみです。長男が代償分割で相続不動産の所有者になれば、譲渡所得から最高3,000万円の控除を受けられます。

ただし換価相続の場合、遺産の評価額をもとに公平に2分の1ずつ分けても、控除を適用できるのは長男だけなので、手元に残る財産に差が出てしまうでしょう。そのため、売却にかかる費用や特例の控除額を加味した上で、分割方法を選択する必要があるのです。

※参考:国税庁「No.3302 マイホームを売ったときの特例

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例とは、被相続人が居住や事業のために所有していた土地を相続する場合、最大80%もの相続税評価額を減額できる制度のことです。

本特例を適用するには宅地などを相続開始時から相続税の申告期限まで有していることが条件なので、代償分割を選択した方が利用するケースが多いでしょう。

※参考:国税庁「No.4124相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)

空き家にかかる譲渡所得の特別控除の特例

被相続人が生前一人で住んでいた不動産を売却する場合、空き家にかかる譲渡所得から最高3,000万円控除できます。細かい要件はありますが、適用できれば別居していた相続人であっても譲渡所得税を節税できるので、検討する際には詳細を確認してみましょう。

※参考:国税庁「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

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