オーバーローンの家を売却するデメリット!離婚での財産分与に関する注意点もあわせて解説
家を売る場合、売却価格から残債を差し引いてもローンが残る”オーバーローン”の状態では、売却することができません。
オーバーローンの問題点と、オーバーローンになる場合の対処法などを詳しくお伝えします。
家の売却時にオーバーローンだとどういった問題がある?
家の売却時にオーバーローンだとどういった問題があるのでしょうか?
家の売却でのオーバーローンとは
まず家の売却の際のオーバーローン状態についてですが、売り出した家の売却価格が住宅ローン残高を下回った場合を指します。
つまり以下の構図の状態です。
・売却価格<住宅ローン残高
オーバーローンだと抵当権が抹消できず、家を売却できない
住宅ローンが残る家を売却するには「売却代金でローンを完済できること」が条件です。ローンの残債を全額返済し、金融機関による抵当権を抹消する必要があります。
オーバーローンの状態だとローン残高が残ってしまうため、抵当権の抹消ができず、売却できません。
オーバーローンになる場合の対処法
ではこのようにオーバーローン状態となってしまった場合、どのような対処法があるのでしょうか。
対処法には以下の4つがあります。
- 住み替えローンを利用する
- 売却を延期する
- 貯金を取り崩すか資産売却などして差額を埋める
- 任意売却する
状況によって適した方法が変わるため、内容を理解しておきましょう。
住み替えローンを利用する
住み替えローンとは住み替える物件と現在住んでいる物件(売却予定物件)の住宅ローンを1つにまとめる方法です。
ポイントとなるのは銀行などの金融機関の審査の部分です。
審査の際は、住み替える物件と売却したい物件の両方の物件に対する借入額の合計で審査をすることになるため、融資金額も大きくなります。
当然ながらその分、金融機関の審査も厳しくなります。
審査の通りやすさは、年収や属性(勤務先など)に応じて変わってくるので、住み替えローンを利用できるかどうか、審査が通る可能性があるのか、についてはあらかじめ検討しておく必要があります。
住み替えローンの利用は、収入に余裕がある場合や転勤などで新たな物件購入が必要な場合などにおすすめです。
売却を延期する
売却する時期を延期し、オーバーローン状態からアンダーローン(住宅ローン残高<売却価格)状態になる時期まで待つ方法もあります。
ただしこの方法は、引越しを急いでいないときや時間的に余裕がある場合、いつ売っても売却価格が大きく変わらないと場合という特定のケースに限られるでしょう。
短期間での売却を希望している場合ではなかなか検討できない方法といえます。
貯金を切り崩すか資産売却などして差額を埋める
もっともシンプルな方法としては、何らかの方法でローン残高と売却価格の差額を埋めてしまうという方法です。
貯金を取り崩し差額に充当する、別の保有資産を売却し差額に充当するといった方法です。この方法によりローンの残債を完済できれば売却も容易になります。
売却価格とローン残高の差が少ない場合などにおすすめの方法です。
任意売却する
任意売却とは住宅ローンなどの借入金の返済が不可能になりローンの残高が売却価格より大きい場合でも、金融機関の合意のもとで家を売却する方法です。
金融機関の了承をもらう必要がありますが、売却価格に近い金額で売却できる可能性が高く、ローンの残債も一括ではなく払える範囲で少しずつ返済できます。
また任意売却ではなく競売という方法もありますが。競売の場合の売却価格は高くても市場の7割程度になるケースが多いと言われており、任意売却の方が金額面でのメリットも大きいと考えられます。
任期売却のデメリットとしては信用情報に記録されてしまい、クレジットカードの利用や今後の住宅ローンを組む際に悪影響を与える可能性があります。
あくまで最終手段であるため、基本的には別の方法で家を売却しましょう。
任意売却を行う場合は、通常の不動産売買よりイレギュラーな点が多く金融機関との交渉も必要になるため、経験豊富な不動産会社に相談しましょう。
売却は仲介より買取がおすすめなケースもある
家の売却は仲介だけではなく、買取という方法もあります。不動産会社にそのまま家を買い取ってもらう方法です。
不動産会社への仲介手数料がかからないことや素早く売れること、リフォームやクリーニングが不要な点などがメリットです。一般的に仲介よりも売却価格が下がると言われますが、どちらが高く売れるのかは状況次第で変わります。
たとえば立地条件や周辺環境などが良いと、比較的高く売却できます。
売却価格がすぐわかる点も買取のメリットです。仲介による売却では、買い手が見つかるまで販売活動が続くため、実際の売却価格が判明するまでに時間がかかります。
まず買取査定を依頼して、ローン残債を支払えるのか(オーバーローンになるのか)を確認する方法もおすすめです。
オーバーローンの家を財産分与する方法
結婚して家を購入し離婚した場合は、家も財産分与の対象です。ではオーバーローンの状態で家を財産分与する場合は、どのような方法があるのでしょうか。
オーバーローンの家は財産分与の対象にならない
離婚を理由に家の売却を検討したとしましょう。
いざ査定に出してみる売却価格が想定よりも低く、オーバーローン状態であるとわかったとします。そのような場合、どのような方法をとったら良いのでしょうか。
まずそもそもの考え方として、オーバーローンの場合はオーバーローンの部分は財産分与の対象外となります。あくまで財産分与は財産に関する分配を目的とするためであり、負債部分は対象外となるのです。
基本的にローン残額は、名義人が継続して返済義務を負います。
一方でアンダーローン(売却価格>住宅ローン残高)の場合、財産は折半することになります。
オーバーローンの家を財産分与する3つの方法
オーバーローン状態で財産分与する方法としては、以下の3つが考えられます。
- 任意売却する
- 名義人が住み続けて住宅ローンを返済する
- 名義人でないほうが住み続ける
任意売却する
まず1つ目は、オーバーローンの対処法でも述べた通り任意売却を使った方法です。金融機関の許可を得て自宅を売却し住宅ローンの差額に充当させ、ローンを完済します。
この方法のメリットは売却価格とローン残高の差額を自己資金で補うことによって、ローンを完済できる点です。
ローンを完済できるということは財産分与がスムーズになるため、双方にとって納得感のある公平な解決策となるでしょう。
ただし差額の負担を夫婦で分かち合うか、どちらかが負担する形での合意が必要です。
名義人が住み続けて住宅ローンを返済する
2つ目は住宅ローンの名義人がそのまま住み続ける方法です。家への愛着が強い場合や、子どもの学校関係などで住み続けたほうがいい場合に適しています。
住宅ローンの名義人がそのまま住み続ける場合では、煩雑な手続き変更が不要である点とローン完済後に自宅が住宅ローンの名義人の資産となる点がメリットとなります。
一方で保証人などの契約関係はあらかじめ金融機関に確認しておく必要はあるでしょう。
ペアローンの場合はどうなるのか
ではペアローンで住宅ローンを組んでいる場合は、どのようになるのでしょうか。
まずペアローンとは夫婦それぞれが契約名義人となり住宅ローンを組んでいる状態を指します。またローン契約時に双方が連帯して借入を行っている特性上、離婚する場合でも両者に支払い債務が残る形になります。
これらを解消するにはローンを組み直す(借り換えする)、または一方に支払い債務を引き継ぐ必要がでてきます。ただしどちらの方法でも金融機関が審査をおろすかどうかはそのときの信用力に左右されるので慎重な判断が必要です。
ふたりで分けていた金銭債務を片方に寄せることになりますので、ローン審査が厳しくなることが想定されます。
名義人でないほうが住み続ける
最後はローンの名義人ではないほうが住む方法です。
この方法のメリットとしては、子どもの学校や教育を考えた際に生活環境を変えずにすむので安定した生活が送れるという点です。
ただし、あくまで所有権は元配偶者が有しているために許可なく売却されてしまうリスクはあります。そのためにも離婚協議の際には、きちんと住宅についての取り決めをするなど合意しておきましょう。
オーバーローンの家を売却する際の注意点
ではオーバーローンの住宅を売却する場合は、どのような点に注意したら良いのでしょうか。
まずはオーバーローンになりそうかを確認する
まずは住宅のローン残高と売却可能な価格を確認しましょう。
住宅のローン残高は、金融機関から毎年届く残高証明書などで確認できます。インターネット上で返済状況を確認できる金融機関もあります。
売却価格については不動産会社に査定依頼する方法や、インターネットなどで周辺の売却価格や売却相場を調べてみる方法もよいでしょう。
不動産という特性上、時期によっても価格が変動する可能性があるため、そういった意味合いからも不動産会社に査定してもらう方法をおすすめします。
離婚する場合の確認事項
離婚によりオーバーローンの家を売却する場合は、以下の点を確認しておきましょう。
- 住宅ローンの名義人
- 連帯保証人
- 返済能力
住宅ローンの名義人
離婚時に住宅ローンの残債がある場合、家の売却前にローンの名義人を確認しておきましょう。名義人がローンを返済し続けることになります。
離婚を理由とする住宅ローンの名義変更をしたい場合、通常は承諾されません。金融機関から見たリスクが大きいことが理由です。
ペアローンでも引き続き名義人が返済義務を負うことになるものの、新たな名義人の返済能力が十分な場合は、名義変更が金融機関に許可されるケースもあります。必ず売却前に名義人を確認しておきましょう。
連帯保証人
ペアローンを利用するケースなど、住宅ローンを借りる場合に連帯保証人がいるケースがあります。その場合、離婚したからといって連帯保証人を外せません。
ローンの名義人が返済できなくなった場合は、連帯保証人に返済義務が生じます。今一度、連帯保証人を確認しましょう。
返済能力
妻などが住み続けるケースでは、夫が新居の家賃を払いながら元の住宅ローンを返済するため十分な収入が求められます。
返済を3カ月以上滞納すると家が競売にかけられる可能性があります。妻と子どもが住居を失うかもしれない点に注意しましょう。
競売では、通常のよりも低い売却価格となるため、手元資金が減少します。ケース次第ではローンの返済に全額当てられ、手元に残らない場合もあると思います。
できるだけ売却費用を抑えることが大事
いずれにしても、売却が決まった場合は仲介手数料をはじめ売却コストがかかります。(売却益がプラスとなった際には譲渡所得税も)
そのほかにも転居を必要とする場合には、引越費用や転居先への契約金などがあり、大きな金銭的負担が重なっていきます。
時期やタイミングを見直すことによって余計な金銭負担を抑えることもできるため、総合的な目線で売却を検討しましょう。