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相続不動産の売却時に使える税金の特例とは?適用要件や計算方法も分かりやすく解説

2024/08/30

不動産を相続した後の選択肢として、売却があります。特に、空き家となった住宅の敷地部分は、2023年の法改正により固定資産税などの軽減措置が受けられない可能性があるため、手放すことを考えている人も多いでしょう(※)。

相続不動産を売却すると、譲渡所得税や印紙税、登録免許税などの税金がかかります。このうち不動産売却による譲渡所得に関する税金については、「取得費加算」や「空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除」などの特例措置を利用できるでしょう。

相続不動産の売却時に使える税金の特例や、適用を受けるための要件、特例適用後の譲渡所得税の計算方法を紹介します。

※参考:政府広報オンライン.「空き家の活用や適切な管理などに向けた対策が強化。トラブルになる前に対応を!」.“税金の負担が増えます”.

相続不動産を売却する際に発生する税金は?

国土交通省の「2023年土地保有・動態調査」によると、2022年に売却された土地のうち、取得理由として最も多かったのが相続です。また土地の売却を決心した理由として、「管理できなくなったため売却」が最も多く、「相続税の支払いのため売却」という人も一定数います。

ただし、相続した不動産を売却する場合、以下のような税金がかかります。

税金の種類 内容
譲渡所得税 相続した不動産を売却し、利益(譲渡所得)を得た場合に課税されるもの
住民税 不動産売却による譲渡所得に対して、翌年課税されるもの
復興特別所得税 不動産売却による譲渡所得に対して、2037年まで課税されるもの
印紙税 不動産の売買契約書を作成する際に、契約金額に応じて課税されるもの
登録免許税 売却金額でローンを一括返済して抵当権を外し、抵当権抹消の登記手続きを行う際に不動産1筆で1,000円支払います。

※参考:国税庁.「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」.“税額の計算方法(土地や建物を譲渡したとき)”.

特に相続人の負担が大きいのが「譲渡所得税」

こうした税金の中でも、特に相続人にとって負担が大きいのが「譲渡所得税」です。

土地や建物の譲渡による所得は、給与所得などのほかの所得と合算せず、分離して計算する仕組み(分離課税制度)が採用されています。譲渡所得の金額を求める計算式は、以下の通りです(※)。

収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額

譲渡所得税の税率は、その土地や建物の所有期間によって変わります。譲渡した年の1月1日の時点で、所有期間が5年を超える場合は「長期譲渡所得」、所有期間が5年以下の場合は「短期譲渡所得」の税率が適用されます。

譲渡所得税の金額の計算式は、それぞれ以下の通りです。

【長期譲渡所得に当てはまる場合】
課税長期譲渡所得金額×15%=譲渡所得税額

【短期譲渡所得に当てはまる場合】
課税短期譲渡所得金額×30%=譲渡所得税額

例えば、所有期間が5年以下の相続不動産を売却した場合、収入金額が5,000万円、取得費が2,000万円、譲渡費用(手数料など)が100万円とすると、譲渡所得税額は以下の通りです。

5,000万円-(2,000万円+100万円)×30%=870万円

※参考:国税庁.「No.1440 譲渡所得(土地や建物を譲渡したとき)」

相続財産を譲渡した場合の取得費の特例

このように、譲渡所得に対する税金は、不動産を相続した人にとって大きな負担です。
しかし、土地や建物、株式などの相続財産を一定期間内に譲渡する場合に限り、相続税額のうち、一定の金額を譲渡資産の取得費に加算することを認める特例があります。特例の適用を受けると、譲渡による収入金額から差し引かれる金額が増えるため、課税譲渡所得金額を減らすことが可能です。

この特例を「相続財産を譲渡した場合の取得費の特例(通称:取得費加算)」といいます。

取得費の特例(取得費加算)を受ける要件

ただし、取得費加算の適用を受けるには、以下の3つの要件を満たす必要があります。

  1. 相続や遺贈により財産を取得した者であること
  2. その財産を取得した人に相続税が課税されていること
  3. その財産を、相続開始のあった日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後3年を経過する日までに譲渡していること

特に注意が必要なのは、3つ目の要件です。不動産を相続した人は、相続が開始された日の翌日から相続税の申告期限の翌日以後(10カ月)、さらに3年を経過するまでの間に売却しない限り、取得費の特例を利用できません。

つまり、取得費の特例を受けるための猶予期間は、相続開始から3年10カ月以内です。

※参考:国税庁.「No.3267 相続財産を譲渡した場合の取得費の特例」
※参考:国税庁.「No.4205 相続税の申告と納税」.“申告の期限と方法”.

取得費に加算される金額の計算方法

取得費に加算できる金額は、以下の計算式で求められます。
その相続人の相続税額×(譲渡した不動産の相続税評価額÷相続した財産全ての相続税評価額)=取得費加算額

例えば、相続税額が400万円、譲渡した不動産の相続税評価額が3,000万円、相続した財産全ての相続税評価額が6,000万円とすると、取得費加算額は以下の通りです。

400万円×(3,000万円÷6,000万円)=200万円

なお、取得費加算額が不動産の売却による譲渡益(譲渡所得)を上回る場合、取得費加算額はその譲渡所得に相当する金額です。

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被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例

亡くなった人が住んでいた家など空き家を相続し、売却を考えている人もいるでしょう。空き家を売却するときに利用できるのが、「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」です。

この特例では、相続した居住用家屋またはその敷地を、2016年4月1日から2027年12月31日までの期間に売り、かつ一定の要件を満たした場合に、譲渡所得の金額から最高3,000万円まで特別控除を受けられます。ただし、2024年1月1日以降に空き家を売却し、その土地や建物を相続した人が3名以上である場合は、控除額の上限は2,000万円までです。

これまで特例の適用期間は、2023年12月31日まででしたが、2023年の税制改正に伴い延長されました。

※参考1:国税庁.「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
※参考2:国土交通省.「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」.“特例措置の概要(令和6年1月1日以降の譲渡)”

最高3,000万円の特別控除を受ける要件

「被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」で最高3,000万円の特別控除を受けるためには、相続した空き家に対する要件と、売却に関する要件の両方を満たす必要があります。

特例の対象となるのは、“相続の開始の直前において被相続人の居住の用に供されていた家屋”で、次の3つの要件全てを満たすものを指します。

  1. 1981年5月31日以前に建築されたこと
  2. 区分所有建物登記がされている建物でないこと
  3. 相続の開始の直前において被相続人以外に居住をしていた人がいなかったこと

ただし、2019年税制改正に伴い、被相続人が老人ホームなどに入居していた場合も認められるようになりました。

また売却に関する要件は以下の4つです。

  1. 相続や遺贈により財産を取得した者であること
  2. 相続した空き家をそのまま譲渡するか、取り壊しを行ってから売ること(ただし事業や賃貸、居住のために使用されていたものを除く)
  3. 相続の開始があった日から、3年が経過した日の年の12月31日までに売ること
  4. 売却代金が1億円以下であること

※出典1:国税庁.「No.3306 被相続人の居住用財産(空き家)を売ったときの特例」
※参考2:国土交通省.「空き家の発生を抑制するための特例措置(空き家の譲渡所得の3,000万円特別控除)」

特別控除を受けるときの計算方法

特例が適用された場合、空き家を売却したときの譲渡益(譲渡所得)から、最大3,000万円まで特別控除を受けられます。

前述の通り、課税譲渡所得金額は以下の計算式で求められます。

収入金額-(取得費+譲渡費用)-特別控除額=課税譲渡所得金額

例えば、売却による収入金額が6,000万円、取得費が2,000万円、譲渡費用(手数料など)が100万円とすると、課税譲渡所得金額は以下の通りです。

6,000万円-(2,000万円+100万円)-3,000万円=900万円

ただし、相続した空き家に関する特別控除は、取得費加算などの特例と併用できません。それぞれの特例の適用要件や、適用した場合の譲渡所得の金額を計算し、より節税につながるものを選ぶとよいでしょう。

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