相続した不動産の評価額の調べ方は?計算式や評価額を下げる方法を紹介
遺産に不動産が含まれている場合、相続税がどれくらいかかるか調べる方法を紹介します。自分でも相続税を把握できれば、遺産分割や不動産活用、売却など相続後にどうすべきかを考えやすくなります。
相続した不動産の評価額の算出方法に加え、評価額を下げる方法などについて解説します。
相続した不動産の評価額とは?
相続した不動産の評価額とは、相続税などを算出する際に基準となる価格のことです。相続財産には不動産のほかに現金や預貯金、有価証券などがありますが、それぞれ評価方法が異なります。
現金や預貯金の場合は金銭的価値が明確ですが、不動産の場合はいくらの価値があるかそのままではわかりません。そこで金銭価格に直してから評価するために、評価額を算出するのです。
建物の評価額には固定資産税評価額が用いられます。一方で土地の評価額は路線価方式や倍率方式などで求められることが一般的です。
相続した建物の評価額の計算方法
相続した建物の評価額は、固定資産税評価額と同じです。固定資産税評価額とは固定資産税を算出する際の基準となる土地や建物の評価額のことです。土地の価格は相続税路線価として、国税庁が毎年1月1日時点での評価額を7月に公表しています。
固定資産税評価額は3年に1度の評価替えがあるため、市町村などから送られてくる課税明細書などで調べる際は最新のものを参照するようにしましょう。
相続した建物の評価額は、被相続人の自宅として使用していた場合と、賃貸マンションとして貸し出していた場合で変わります。
相続した建物の評価額の計算式 | 計算例 | |
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自宅として使用していた場合 | 評価額=固定資産税評価額×1.0 | 固定資産税評価額=4,000万円の場合 評価額=4,000万円×1.0=4,000万円 |
賃家や賃貸マンションとして 貸し出していた場合 |
評価額=固定資産税評価額×(1-借家権割合(30%)×賃貸割合) | <例1:固定資産税評価額4,000万円の家を貸している場合> 評価額=4,000万円×(1-30%)=2,800万円 <例2:固定資産税評価額5億円の賃貸マンション、総専有床面積のうち75%を貸している場合> |
賃貸割合は床の専有面積で計算します。たとえば全20戸のうち10戸が賃貸されていても、それぞれの部屋の専有面積が異なれば、賃貸割合は50%とはいえません。また補足としてマンションなどの固定資産税評価額には、住戸の居室内である専有部分と廊下やエントランスなどの共有部分が、各部屋の面積に応じて按(あん)分された価格が合算されています。
相続した土地の評価額の計算方法
相続した土地の評価額の計算方法は、路線価方式と倍率方式の2種類があります。どちらの方式で算出するかは決められており、国税庁のWebサイトで確認できます。一般的に市街地が多い都市部では路線価方式が採用され、路線価が定められていない地方などでは倍率方式が採用される傾向です。ここからは、それぞれの計算方法を解説します。
路線価方式
国税庁が公開している「財産評価基準書」から相続する土地が所在している地域を確認すると、土地周囲の道路に「300C」や「40E」といった数字とアルファベットの記載があります。数字はその道路に面する土地1m²当たりの価格(千円単位)を表したもので、アルファベットは借地権割合(借主の権利部分)を表しています。これらを用いて評価額を計算することが可能です。
【路線価方式による評価額】
<例:路線価300C、土地面積200m²の場合>
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また土地に貸家や賃貸マンションなどが立っている場合は以下の借地権割合を用い、建物と土地を合わせて評価額を算出します。
【財産評価基準書に記載されている借地権割合(%)】
A | B | C | D | E | F | G |
90 | 80 | 70 | 60 | 50 | 40 | 30 |
【貸家建付地の評価額】
<例:路線価300C、土地面積200m²、入居率100%の場合> |
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参考:国税庁.「財産評価基準書」.
参考:国税庁.「No.4614 貸家建付地の評価」.
倍率方式
路線価が定められていない土地では、倍率方式で評価額を求めます。計算式は以下のとおりです。
【倍率方式による評価額】
<例:固定資産税評価額2,000万円、土地の倍率1.1の場合> |
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参考:国税庁.「No.4606 倍率方式による土地の評価」.
相続不動産に関するお問い合わせ相続した不動産の評価額の調べ方
相続した不動産の評価額を算出するには、先述したとおり、固定資産税評価額や路線価などを調べておかなければなりません。それぞれの情報をどこで調べればよいかご紹介します。
固定資産税評価額
固定資産税評価額は、固定資産税の納税通知書に付いている「課税明細書」に「価格」として記載されているため簡単に確認可能です。もし紛失した場合は、役所(東京23区内は都税事務所)で固定資産課税台帳(名寄帳)を閲覧するか、固定資産評価証明書を取得することで確認できます。
路線価、土地の倍率、借家権割合、借地権割合
路線価や土地の倍率、借家権割合、借地権割合は国税庁の財産評価基準書で確認できます。なお、借家権割合は国税庁の財産評価基準書内の、各都道府県の借家権割合に記載されていますが、全国統一で30%です。
賃貸割合
賃貸割合を知るためには、各部屋の床面積を確認する必要があります。床面積は法務局で取得できる、登記簿謄本や登記事項証明書でわかります。登記簿謄本や登記事項証明書は相続する不動産のある土地に行かなくても、全国どこの法務局からでも取得可能です。
相続した不動産の評価額を下げる方法
相続した不動産の評価額が高い場合、必然的に相続税も高くなります。ここからは、なるべく相続税を抑えるために評価額を下げる方法について、見ていきましょう。
建物の評価額の場合
被相続人がすでに他界している場合、建物の評価額を下げることはできません。そのため基本的には、相続が発生する前に対策を取る必要があります。
空き家を所有している場合は貸し出すことで、借家権割合分、評価額を下げられます。賃貸マンションなどの場合は入居率を上げれば賃貸割合が大きくなるため、その分評価額を下げられるでしょう。
土地の評価額の場合
土地の評価額を下げる方法はいくつかあります。
たとえば、被相続人が住んでいた土地や事業に使っていた土地などは、一定の条件を満たす場合、小規模宅地の特例が利用できる可能性があります。限度面積は決まってはいますが最大80%の減額が可能で、節税対策としてよく利用されている方法です。
また土地の形や大きさに応じて、不整形地補正や間口狭小補正、奥行長大補正などを利用できる場合もあります。地積規模の大きな宅地(三大都市圏においては500m²以上、それ以外は1,000m²以上)を所有している場合は、「地積規模の大きな宅地の評価」の条件を満たしていれば評価額が減額されます。
参考:国税庁.「No.4124 相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」.
参考:国税庁.「4609 地積規模の大きな宅地の評価」.
評価額が高額になる場合は不動産を売却するのも選択肢の一つ
相続した不動産の評価額を下げるために利用できる制度や特例がなく、評価額が高額になって相続税が膨れ上がる場合は売却をするのも一つの方法です。
売却をして現金にすれば相続税も支払いやすく、遺産分割もしやすいでしょう。固定資産税評価額と実際の売価は異なるため、保有している不動産によっては想像より高い金額で売却できる可能性もあります。