不動産相続のトラブル事例|揉める原因や回避方法も解説
相続のトラブルといえば、資産が豊富な家庭に起こる財産争いのイメージがありますが、実は裁判所に持ち込まれる相続トラブルは富裕層世帯よりも一般的世帯における相続トラブルが圧倒的に多いです。
相続トラブルは財産があれば誰にでも起こり得ますが、とくにトラブルの火種となるのが不動産です。不動産相続のトラブル事例と解決方法を解説します。
相続トラブルの原因。ほとんどが不動産?
相続トラブルが起きてしまう原因、相続と不動産の関係性などについて解説します。
相続トラブルは8割以上?
一般社団法人相続解決支援機構の「相続トラブルに関する調査(2022年)」によると、相続経験者の中で何らかのトラブルを経験した人、そして相続財産の中に不動産が含まれていた人の割合は、どちらも8割近い数字でした。
一般社団法人相続解決支援機構の「相続トラブルに関する調査(2022年)」より
上記のデータより、相続におけるトラブルが頻繁に起きていることと、相続財産に不動産が含まれている割合が高いことがわかります。
相続トラブルの原因はほとんどが不動産
同データによると、相続トラブルの原因の4割程度が不動産絡みであるということもわかります。
一般社団法人相続解決支援機構の「相続トラブルに関する調査(2022年)」より
不動産は高額であり、唯一無二の財産なので、人によってその不動産に対する価値や思い入れが大きく変わってきます。また、現金や有価証券のように簡単に分けることができないため、トラブルに発展すると考えられます。
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不動産相続のトラブル事例
不動産相続の具体的なトラブル事例について解説します。事例を知っておくことでトラブルの未然回避につながります。
不動産を誰が相続するかで争う
亡くなった方の財産が不動産しかなかったり、また、相続財産の中で不動産の価値が高かったりすると、その不動産を誰が相続するかで、相続人の間で争いが起こります。
不動産が現金のように簡単に、しかも平等に分けることができれば、トラブルに発展することは少ないですが、不動産は簡単に分けられません。
相続する土地が大きく、接道の条件もよければ、費用をかけて分筆し、相続人の数で平等にその土地を分けることも可能です。しかし、相続する土地にすでに建物が建っていて壊すことができなかったり、土地がそれほど大きくなく、また、接道条件も悪かったりすると、相続予定の土地を平等に分筆することは難しくなります。
そのような土地を無理矢理に分筆しようとすると、相続人の間での不動産の価値に差がでてしまったり、土地を小さくしすぎることでその土地自体の価値が下がってしまったりします。
このように、平等に分けることができない不動産を誰が相続するかで、相続人の間で骨肉の争いが起こってしまう訳です。
不動産を誰も相続したがらない
相続予定の不動産を誰も相続したがらないトラブルです。不動産を押し付けあうことで、いつまでたっても遺産分割がまとまらないという事態が起こります。
田舎にある古い住宅や資産性のないアパート、使い道のない山林や農地などの不動産は、資産価値が低いうえ、維持していくために多額の費用がかかります。そのような不動産は、市場性も低いため、有効活用したり、売却することも難しかったりという問題を抱えています。
そのような不動産が相続財産の中にあると、相続人の間でその不動産の押し付け合いが始まり、いつまでたっても遺産分割がまとまらなくなります。不動産は、所有しているだけで、毎年、固定資産税や維持費がかかってくるため、価値の低い不動産は相続人にとっては、厄介者扱いにされてしまいます。
不動産の名義が変わっていなかった
相続が始まって、登記簿謄本を取り寄せてみると、不動産の名義が亡くなった人ではないことが判明するケースがよくあります。
2024年より相続登記が義務化されますが、以前までは義務付けられておらず、利用する予定のない不動産や、市場の価値が低い不動産などは、相続しても名義を変更せず、そのまま放置している人も多くいました。
不動産の名義人がすでに亡くなっている場合、名義を変更するためには、亡くなった方の相続人全員に連絡をとり、名義変更に同意を得なければなりません。該当する相続人に連絡がつけばいいですが、相続が何代も続いていた場合、相続人もすでに亡くなっていたり、音信不通になっていたりする可能性があります。
ひとつの不動産の名義を変えるために多額の費用をかけなければならないといったトラブルに陥ってしまいます。
相続税が支払えない
不動産以外の現金や預貯金などの換金性の高い財産が少ない場合に起こってしまうトラブルです。
相続税は、財産を相続した相続人が相続が開始してから10カ月以内に、現金で一括で納付するのが原則です。価値の高い不動産や一等地に建っている実家の不動産を相続した場合は、相続税が課税される可能性が高くなります。
遺産の合計額が、基礎控除額(3,000万円+600万円×相続人の数)を超えると、相続税が課税されます。たとえば、相続人が3人だった場合、遺産の合計額が4,800万円を超えると、相続税が課税されるという計算になります。
価値の高い不動産だけを相続してしまうと、相続税を納税する資金が準備できず、せっかく相続した不動産を、不利な条件で売却しなければならないケースもあります。
不動産相続のトラブルを未然に防ぐには
相続開始後にトラブルが起こってしまうと、泥沼にはまってしまい、解決するのに長い時間を要したり、大きな損失を生んだりしてしまいます。また、トラブルを解決できず、次の世代まで先送りしなければならないということもあり得ます。
不動産の相続をめぐるトラブルは、生前にしっかりとした準備をすることで、簡単に防ぐことができます。専門家の力を借りながら、さまざまな手を打つことで、スムーズな相続が実現できます。
対策①:所有する不動産の謄本を取得する
不動産を相続するうえでまずやらなければならないことは、不動産の権利関係を明らかにすることです。そのためには、不動産の謄本を取得する必要があります。
抵当権などの他人の権利がついていないかどうか、登記名義がきちんと変わっているかどうかをチェックします。登記名義が変わっていない場合には、後々大きなトラブルに発展する可能性があるため、早めに名義を変える手続きをとる必要があります。
対策②:不動産を含めた相続財産の棚卸をする
現預金、有価証券など不動産以外の財産も含め、相続する財産にどのようなものが、どの程度あるのか把握します。このことを、この相続財産の棚卸と呼んだりします。
相続財産の棚卸をするメリットは、どの程度の相続税がかかるのかを把握できる点、また、その相続税をどのように支払っていくかを検討し、生前に対策を打つことができる点にあります。
相続財産の中で、納税資金が十分にあれば問題ありませんが、すぐに換金できない不動産などの財産の割合が大きかったり、現金が不足していて納税資金が足りない場合は、事前に対策をとる必要があります。生命保険への加入を検討したり、あらかじめ不動産を売却する準備をしたりということが対策として考えられます。
相続人が納税資金に困らないように、生前に相続財産の棚卸をすることはとても重要です。棚卸をしたあとには相続人の間で、誰がどのように相続財産を引き継ぐべきかをシュミレーションすべきでしょう。
シュミレーションすることで、不動産を売却すべきなのか、分けるべきなのかなど、さまざまな具体策を講じることができます。
対策③:最適だと思う分割案を遺言書にまとめる
遺言書は、亡くなった方が、相続財産をどのように分けるかの意思を示した書類です。
相続人がどのように相続するかについては、亡くなった方の意思を示した「遺言書」の内容が最も優先されます。「遺言書」があれば、財産の分割が粛々と行われ、相続人間の無用なトラブルを防ぐことができます。
一方で、遺言書がない場合は、誰がどの財産を相続するかを相続人の間で話し合って決めることになります(これを遺産分割協議といいます)。相続人の間の話し合いの中で、主張がぶつかり合い、結果として多くのトラブルや遺恨が発生します。
トラブルを防ぐには、最後の意思表示として「遺言書」を残していくようにすべきでしょう。
早めの相談を
相続財産の棚卸や、不動産の査定・売却の準備、生命保険の検討、遺言書の作成など、考えなければならないことは多岐に渡りますが、それぞれの分野に、それを専門にしている専門家がおります。
準備は早いに越したことはありません。早めに準備ができれば、対策する時間も、資金も十分にとることができます。大切な財産がトラブルなく相続できるように、まずはその道の専門家にお尋ねすることをおすすめします。
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